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2004.07.07 Wednesday
精神障害者の移送という仕事
押川 剛(コンビンサー)インタビュー

音楽関係の取材が多いのですが、この人にはどうしても会いたかった。押川さんの生き様が全くロックだと思った。少し前に、引きこもり関係の本がたくさん出版されワイドショーとかでもいろんな事件が放送されていたちょうどそんな時期での取材。押川さんが自分とほとんど同い年ということもあって、自分が社会に対して出来ることを考えさせられるきっかけになった取材だった。廃刊になったフライデーで紹介されていたのを立ち読みしてすぐに取材の申し込みを本人にした。



 「コンビンサー」。 時代が必要とした「説得」というハード・メンタル・ワーク。この「コンビンサー」という職業をご存知だろうか?精神障害者を説得し、本人の同意を得たうえで病院に移送し医療につなげるのがコンビンサーという職業である。今までは「搬送」という言葉が使われていたが、現在では「移送」という言葉が一般的に使われるようになった。周知のとおり少年犯罪や凶悪事件が毎日のように各地で発生している。トキワ警備代表の押川剛代表は、精神障害者の「移送」の草分けとして、最近ではマスコミに頻繁にとりあげられるようになった。中でも朝日テレビで移送現場の密着取材が放送された時は、大きな反響があったようだ。ご覧なった方もいるかもしれない。佐賀のバスジャック事件の少年も押川代表が事件の前に移送していた。その内容は、「子供部屋に入れない親たち」という著書で述べられている。今までは、水面下で精神障害者の病院への移送が行われていたのも事実のようだ。世間体を気にする親からの依頼で警備会社やタクシー会社が患者本人の意思なしで強制的に行われるケースが多かった。押川代表は、依頼の全てに立ち会い責任を持って移送を完了する。最も重要で、この移送のエアポケットとなるのが、患者の「説得」である。依頼のあった親と病院の間に入り、患者を説得し安全に移送し医療につなぐ。たいていの場合、患者の部屋に入り、ひきこもっていた患者といきなり話をして病院に行こうと説得するのである。親が何年もかかって説得できなかったことをその場で瞬時にやってのけるのである。いったい、どのようにして説得が行われるのか?

 著書の内容も壮絶だったが、お会いして聞いた話は想像以上に厳しい業務で、しかもヒューマンなものだった。新宿にある事務所で話を伺った。取材中、BSフジのキャメラも回っていた。

 移送業務は、精神的、体力的、社会的にも多くのリスクを背負うことになるがストレスはいったいどうのように解消しているのか聞いてみたが、押川代表の答えはあっさりこうだ。 「ストレスは、そんなにないですね。基本的に患者さんというか精神障害の方は好きですから。ストレスというか必ず仕事終わった後に言語障害になるんですよ。言葉が出なくなる。説得するでしょ、集中して。結局私が使える道具は言葉だけなんで、その一言一言は、考えて言っているというよりも感覚的に一生懸命研ぎ澄まされた言葉を出そうとするわけですよ。で、仕事終わった後はストレスというより必ず自分で考えたことが言葉にならない。これが大体2日くらい続きますよ。興奮してるのか寝られないしね。」 もう、これだけで移送の壮絶さを物語っている。人間を救うのは、人間だけであってしかも道具は「言葉」しかないのだ。押川代表は、精神障害者のことを普通だという。 「私が思う普通の人間というのは嘘をつかんとかね。まわりくどい表現をしないとか変なお世辞を言わない人間なんですよ。」

 実際の移送は、数時間から2日間くらいで行われるが、その前には、入念に依頼者からヒアリングを行う。家庭環境にはじまり、今までの行動や言動、いろんな事態を想定した移送方法など万全を期す。朝日テレビ・スーパー・Jチャンネルで放送された移送現場のドキュメントは、衝撃的だった。その精神障害者は、奇声を上げたり、家を拠点に徘徊したりして親にもどうすることができなかった。押川代表は、移送前日から彼の夜の行動を洞察していた。彼は、徘徊途中に露天のたこ焼き屋に目がいったり、レストランに入ろうとして入らなかったり、ビデオ屋に入ってアダルトビデオを観たりしていた。 「彼は、すごくもの食べたいんだなと。アダルトビデオ観てるってことは、人間最後は食い気と色気しかないんですよ。だけど、食べることがうまくできていない。かなり痩せているしね。彼の場合は、なんか「メシ食いに行こう!」っていうのが第一声だった。専門家とかね、臨床心理士とか医者のように難しく見ない。ただ、普通の人間としてこいつはメシを思うように食えていない。一人じゃ食べられないのかな?って。」とその時の様子を振り返る。


 いよいよ子供部屋に入り、患者と顔を合わす。患者は、「お前だれ?!ヤクザだろ!」と奇声を発するがそこから押川代表の説得が始まる。何らかのカタチで患者とコミュニケーションをとれるような話題を提供するにはもう「メシ食いに行こう!」というしかなかった。親が長年どうしようもなかった患者が、押川代表とともに車に乗った。親からすれば信じがたい光景を目の当たりにし、言葉の魔法にかかったようなもんだ。車の中での説得の様子を細かく語ってくれた。

 「前日の彼の行動を見ていれば答えは出ていたんですよ。車に乗せて説得していく。徐々に信頼関係を築いていくということですね。彼らはすごく几帳面。私みたいに遅刻しない。何時までだったら大丈夫とか。十分だけ待つよとか。彼らは時間が止まってるというか自分の時間で生活していこうとするんで、時間の取り決めを要求しますね。あとは、身体に触れていったり、男性だったら女性の、女性だったら男性の話をしながら徐々に距離を縮じめていく。心を開いている部分をキャッチしていくんですよ。普通に『なんですか?』っていうんではなくて『なんじゃ?』みたいなね。」

 人の心を瞬時につかむと意外と正直に自分の最後のハコを開けたりするという。 驚くことに説得して早く信頼関係がもてる患者というのは実に状態が悪いのだそうだ。状態がそんなにひどくないというのは、心を開かない状態、まだ助けを求めていない状態であるという。いわゆる家庭内暴力がそれにあたる。それが過ぎていくと幻覚、幻聴、妄想を見たりするようになる。今、移送で説得が一番難しいのが、医学的用語で人格障害というボーダーの患者だそうだ。普通に生活ができているが、行動がおかしい、相手に危害を加えたり、親に暴力を振るったり、家の壁を壊したりという時期がそれに当たるようだ。 最も精神的に悪い状態の患者には、コミュニケーションが余りいらないという。 「とにかくこの人間は俺のこと(患者本人)をどれだけ考えてくれてるのかと。100%なのか0なのかっていう感覚になるんで、100だって分かってくれれば、もう言葉じゃないね。だから、本当にかわいそうだと思う。助けを求めているから。」と語る押川代表の目は変らず鋭い。

 95年くらいから「ひきこもり」という言葉が使われるようになったようだ。今では、少年、少女、最近増えているという主婦の引きこもりの数は、100万人とも言われている。 押川代表は、ひきこもりなどに見る精神障害の原因は、家庭の絆と性の問題だとハッキリ言い切る。これは、著作にもあるがトキワ警備を設立する前に、ボランティアで数百件もの患者を移送し、それだけの数の親や子供部屋を見てきた経験からでる言葉ゆえ説得力がある。家庭の中での性についてのコミュニケーションについては、ズバリこうだ。 「やっぱり、性のことは、大体隠しますよね。性について親がどのような捉え方をしているか。例えば露骨にオチンチンとかね。話の出来る家庭は意外といいんですよ。性を恥ずかしいとかね、汚いというイメージなのか分からないけど、性に対して隠していくというのは、のちのち嘘つきの人間になっていく。隠すって行為は、だんだん進んでいくと嘘になっていく。だから、オープンに、好きなやつおるのかおらんのかっていう話でもいいし。親の言うことを聞かせるっていうのは、性の部分をきちっとつかんであげれば子供はいうことききますよ。子供といっしょにテレビ見てると自分のタイプの女性を凝視してるとする。そういうのすかさず見抜いて、一週間後、その女性の出てる雑誌でも目の前に置いてやるくらいの接し方、性に対してそこから切りくづしていく。マスターベーションどこでこいてんだ?風呂場ではすんなよくらいのことが言えるかどうかですよね。」

 家庭で性欲を隠すということは、禁欲を求めることになる。良い高校、良い大学、良い会社に行けと親は子供に要求する。スポーツでも良いチームに入って強い選手になれという風に。家庭では、意外と禁欲をしいられる。欲をどのように自制していくか?親は、簡単に性に関して隠したり、触れされないようにする。そして、エリートを目指す家というのは、構造として嘘が家庭内に蔓延し子供が壊れていくという。 何百件と家庭を見てきた中で、子供部屋について患者から共通のメッセージみたいなものを感じたという。



 「このうちは、お父さんのもの、お母さんのものだというわけですよ。でもこの部屋は俺のもんや私のもんやていう感覚。だんだん状況悪くなると篭城しちゃう。例えば隣にトイレつけろとか、増築させたり。最終的に親の所有物を篭城して侵略していく。そんな時にどんどん壁を殴っていきますね。まるで親子の関係っていうよりも家を自分の所有物にしていくための闘いをしているっていうかね。それを家庭内暴力だなんだって、違うね。場合によっては家でみんな生活できなくなって家族が追い出させる。そうなると彼らは、家を守らなきゃって意識に変ってしまう。そこに共通して現れるのが必ず椅子。どっかにある。座椅子だったり家の中で一番高価な椅子を真中に置いていたりして。責任感が強いから、自分が何を悩んでいるか感じてくれない親は、ダメな親だと。そうか、よし俺がこの家を守ってやんなきゃいけない。そんな風に考えてますよ。」とあぐらをかいて身を乗り出してタバコに火をつけた。

 トキワ警備の設立に際してなかなかの美談を聞かせていただいた。 昔付き合いのあった女性がお華をやっていたそうで、展覧会に行った時のこと。花には興味なく剣山を何気なく見ていたが、剣山には穴がないことに気づいた。単純に水を引く穴をつくれば花はぴんぴんしてるんじゃないのかと単純に思った。弁理士に図面を書いてもらって実用新案と意匠権をとり剣山をつくろうとした。新潟にあるという剣山を製造する会社に交渉に行ったが、軽く追い返される。ここで引き下がらないのが押川代表だ。近くの温泉旅館で接待をしようと思い、お金がなかったが思い切って芸者さんを一人つけた。剣山をつくる為にこの人をなんとか接待したいとなけなしの金で30分だけでいいからと芸者さんに頼み込んだ。どっこい芸者さんは、30分どころか時間を延長してさらにスナックにまで連れて行ってくれて締めにラーメンまで付き合ってくれ最後は見送ってくれたそうだ。嘘をつかず、状況を説明し誠意をみせれば相手は人間である。人間・押川剛の説得の言葉は、すでにこの頃から完成されていたのかもしれない。見事、商談は成功した。剣山の名前は、枯れないという意味で「華れん」だそうだ。

 幼い頃からオープンな家庭環境で育ち、親から学んだ言葉を大事に記憶していた。 「特に私の場合頭が悪かったので、おふくろとかおじきが言ったのは、『おまえ、字を書いてもダメ、話してもボンクラやから、体で描け』って言われました。」 と天を仰いで大きな声で笑ってみせたその顔は、少年のようだった。

 平成14年には、精神障害者居宅支援サービスという精神障害者を行政が介護しようという法律が明文化される。本の出版やメディアへ露出することで、専門家でもない押川剛という一人の人間が、移送の現場経験のノウハウと説得するという言葉を武器に、今度は、法律や行政というネクスト・レベルのステージで闘いを挑む。今後は、行政の移送サービスを使えるようにコンビンサーとして家族にアドバイスして関わっていきたいという。 会社を大きくするというよりは、人間的なつながりを大事にして、心の島をたくさん増やしていきたいという言葉には静かな説得力が溢れていた。 撮影のために花園神社に向かう途中に、どんな音楽を普段聴いているのか気になって訊ねた。

「ポップスが好きですね。ビリー・ジョエルとかね。」

やっぱり九州男児の押川剛の心は、どんなときもオネスティーなんだと嬉しくなった。

 

Knack 3号(メディアボーイ)

押川剛著作品はこちら。
「子供部屋に入れない親たち」(幻冬社)


購入はアマゾンで。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344000536/qid=1089274018/sr=1-6/ref=sr_1_8_6/250-3283550-4266634




| テリー植田 | 医療 | 18:41 | comments(0) | trackbacks(0) |
2007.12.17 Monday
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